恋のショック療法
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人もまばらな早朝の道を、ぼくを乗せたタクシーはカオサンに向けて走っていた。
シャッターを開け、店の前をほうきで掃いている華僑。
道端にしゃがんで食器を洗っているおばちゃん。
熱々のおかゆをうまそうにすすっているカップル。
街はこれから動き出そうとしている。
ぼくはなんとも言えない恍惚な気持ちになっていた。
シャワーを浴びて出てくると、入れ替わりでマリちゃんがシャワーを浴びに行った。
テレビがついてたけどそんなものには目もくれず、部屋のなかを改めて見渡していた。
なかなかええとこに住んどるんやなぁ・・・。
ふと、マリちゃんが片づけてくれた財布が目に入り、恐る恐る中を確認。
中身はそのまんま。
今思うとマリちゃんに失礼やろ!って感じやけど新米バックパッカーやったもん・・・。
アクマイト光線で爆発しちゃえよっ、あの時のオレっ!
シャワーから出てきて、ササッとパジャマに着替えるマリちゃん。
「ねるデス・・・か?」
うんうん、寝ましょう、寝ましょうよ!
電気を消して、キングサイズのベッドに横になるぼくとマリちゃん。
テンションが上がりマクリマクリスティー!
それにしてもマリちゃんってちっちゃくて華奢でかわいいよなぁ。
んでもって、こんなかわいい子の部屋にいきなり来ちゃって、この展開。
たぶん明日オレ死ぬな、カオニャオ(もち米)がのどにつまって・・・。
向こう向いちゃって、やっぱ恥ずかしいんかな☆
「マ ・ リ ・ ちゃん」
スースースー・・・。
のび太なのかよ・・・。
朝まで一睡もできんかった。
その日は午前中から出かける約束があったので、朝早くマリちゃんちから帰った。
「次イツ来るデスカ?」
「ウーン、まだわかんないなぁ・・・」
「モバイル、持ッテル?」
「ん?ケータイ?持ってへんよ」
するとメモにマリちゃんのケータイ番号を書いてよこした。
番号は2つあった。
マンションの下までマリちゃんが来てくれて、タクシーを捕まえ、カオサンまでこの人を
送ってあげてと言ってくれた。
キスをしてその日は別れた。
10バーツシェークを買ってさくらGHに帰ってくると、プンちゃんとハーブは起きていて
甘ったるい缶コーヒーを片手にタバコをふかしていた。
「おぉ~、myちゃん、帰ってきた! どうだった、あの子は?」
「ドーン ストップ マーイ ラーブ♪ 恋を止めないで~♪」
「吉川? バク宙でチャオプラヤ川にダイブしちゃいなよ! んで、どうだったの???」
「マリちゃんの部屋、行ってきたでっ!」
「えぇ~! ホンマなん!? ちょお最初からゆってーや!」
これから数か月続く、こんな感じの早朝ミーティング。
つくづくおもろかったよなぁ・・・。
しかし、これはまだまだ序の口。
アホの銀河系軍団が繰り広げるファンタスティックプレーは続きます。