
しばらくしてゴエモンのアパートに行った時のことだ。
んん~っ!?
ゴエモンが洗濯をしに行ったときにさりげなく飾られていた写真立てに目がいった。
前はこんなもんなかったよな。
それにしても、これって・・・。
非常に嫌な予感がした。
ゴエモンが缶コーヒー片手に戻ってきた。
「my、カフェ!毎日カフェ飲んでる。よくないデショ」
じゃあ買ってこやんだらええのに。
そんなことより・・・。
「あのサ、この写真ってだれ?」
写真には赤ちゃんが2人写っていた。
「オネエサンの子どもとワタシの子ども」
キタwww!
またもやプチパニックを起こさせようとしてるのか、オマエは!
「な、なんか色が白くてかわいいね」
お姉さんの子どもはいかにもタイ人って感じの浅黒い肌の色をしていたが、ゴエモンの子はほんとに白かった。
「オトウサン、日本人だから」
はい、もういい。
もうこれ以上この話題を深めていくのはやめよう。
あんまり考え過ぎると、ゲストハウスの片隅で、百円ライターですね毛を1本1本焼いて遊んだり、消しカスとのりでねり消しを作ったりしてしまいそう・・・。
マリちゃんの一件で多少勉強してきたつもりだったが、やっぱりショックはあるよなぁ。
そもそもゴーゴー嬢なんてのは、なにか事情があるからゴーゴー嬢をやっているわけである。
それなりの覚悟をもってないと、なかなか厳しい。
とりあえず、ぼくはその事実を脳内で隔離した。
明日以降のことを考えるのはやめて、今日のことだけを考えよう。
ゴエモンと一緒にいる今が楽しければ、まぁ良しとしよう。
以前のぼくは、ずーーーーーっと先の先のことまで考えながら行動していたので、自然とストッパーがかかっていた。
ところが、タイランドに来て、タイ人やドロップアウトしちゃってる旅人たちと一緒に過ごすうちに、先の先まで考えて行動していることがアホらしくなってしまったのだ。
何月何日にインドビザをとって、何日に渡印。
何月ごろまでにはポルトガルに入って、ロカ岬でゴール。
帰国後は・・・・。
もうこんなことを考えるのはうんざりなのである。
考えても予定通りいったためしがない。
毎日ハプニングが起きる。
その時ぼくはどっちかというと乗っかっていきたいのである。
例えば、明日こそは旅行会社に行って次の目的地への飛行機のチケットを取ろうと決めているとする。
その晩、遊びに行って、女の子に「これからカラオケに行こうよ」と誘われる。
しかも、水商売風の怪しい女の子だ。
正統派バックパッカーなら、「明日はチケットを取りに行くからやめよう」ということになる。
それ以前に正統派ならそんなとこに遊びに行かへんか・・・。
しかし、ぼくは「行かないと損した気分になっちゃう人」なのだ。
だって絶対ノーマルな旅では味わえないスラップスティックな体験がまっているはずなのである。
そうでなかったとしても、「結局高い金払わされただけで、タガメとかコオロギ食わされて帰ってきたわぁ」って、そんなような話を山ちゃんやマスターさんたちにできるわけである。

それで「ブワッハッハッハッハッハ!1000バーツも払ってコオロギって。サイアムでフカヒレ食べるより高いやん、コオロギのほうが、ププッ!」って笑ってもらえれば、それはそれでいいわけだ。
しかし、まぁ、あまり深い付き合いになるのはよくないな。
マスターさんの格言をまた思い出す。
「こっちで自然消滅っていう恋愛のフェードアウトは通用しない」
逃げるしかないってこと!?




